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AI作品と著作権

昨今、AIの利用が各業界で話題となっています。

2023年に発表されたChatGPTはもちろん、2022年末には、有名なフリーイラスト配布の配布元が、配布しているイラストのテイストに似せたイラストを生成するAIを発表するなど、盛り上がりを見せています。

一方で、イラストレーターが手書きで作成した作品について、AIでの作品制作を疑われるトラブルが発生するなど、「AIで作成した作品の取り扱い」についての問題も、しばしば起きているようです。

いずれの技術についても同じことが言えますが、「著しい技術の発展」と、それを扱う人間の意識や、法整備は同時には行われないので、トラブルが発生してしまいますよね。

今回はこの件について、著作権 … 法律の側面から、以下の問題を考えていきます。

問①

AIの学習のため、他の作品を利用する必要があるが、学習に使うこと・学習をもとに作品を出力することは、元の作品の著作権を害することにはならないのか?

問②

AIが作成した作品に、著作権は認められるのか?

問③

認められると仮定した場合、著作権は誰のものになるのか?

システムを作った人? 作品の出力の学習に使う絵画・イラストを選別した人? 作品を出力した人?

※以下の文章は、2023年6月に文化庁が行った著作権セミナーを参考に記載をしています。

著作権侵害などで何らかのトラブルが起きた際には、専門家にご相談することを御勧めします。

そもそも著作権とは?

AIと著作権の関係の話に入る前に、著作権の基本について、今回の件に関わる部分のみ、ごく簡単に触れます。

・著作物

「著作物」は、著作権法第2条第1項第1号で以下の通り定められています。

『思想又は感情を』『創作的に』『表現したもので』『文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの』

・著作権

同法第17条第1項第2項において、著作物を生成すると、「何ら手続きを取らなくても、自動的に「著作権」を取得する」としています。

・著作権の侵害

では、どのような作品の場合、著作権が侵害した、と言えるのでしょうか。

  類似性 … 後発の作品が既存の著作物と同一、または類似していること

  依拠性 … 既存の著作物に依拠して複製等が行われたこと。

       「既存の著作物に接して、それを自分の作品に反映すること」を指す。
        そのため、「偶然に」作品が似てしまった場合は、「依拠性がある」とは言えず、著作権侵害には当たらないことになります。

「類似性」と「依拠性」、この2点を両方満たしている場合は、そのもととなった作品の著作権を侵害しかねません。

その場合は、

①権利者から許諾を得た

②権利制限規定に該当する

この2点のどちらにも該当しなければ、著作権の侵害をした、と判断されてしまいます。

ちなみに…

「アイディア」は著作物には該当せず、著作権法では保護されない(著作権の侵害には当たらない)としています。

例えば、絵やイラストで言えば、「画風」や「タッチ」がアイディアにあたります。

仮に、「画風」だけをまねて、まったく違うテーマや構図を描いた場合は、著作権の侵害には当たらない、と判断されます。

この点を制限してしまうと、その芸術分野の発展が遅れてしまう、というのが、この考え方の根幹にあります。

AI作品と著作権

著作権の対象と、著作権発生の概要をつかんだところで、次に本題の「AI作品と著作権」についてのお話しに入っていきます。

冒頭の3つの問いは、現段階ではどのような回答があるでしょうか。

「文科省 令和5年度の著作権セミナー」の内容から、ご紹介します。

問①

AIの学習のため、他の作品を利用する必要があるが、学習に使うこと・学習をもとに作品を出力することは、元になった作品の著作権を害することにはならないのか?

作品の本質は、「味わうこと、楽しむこと」です。

そのため、「AIの学習のために、作品を利用すること」、これは作品を味わっているわけではないので、これ自体は、著作権の侵害には当たらない、というのが政府の意向です。

では次に、出力された作品は、著作権を侵害することになるかどうかですが、これについては、AI出力作品でない場合と同様に判断されます。

つまり「類似性」と「依拠性」があれば著作権の侵害になりますし、両方該当しなければ、著作権の侵害には当たりません。

ただ、この点については、今後、様々な見解が発生すると予想されます。

現在の技術では、「特定の作家の作品のみを学習用に取り込み、そこから作品を出力する」ということが可能です。

その結果、「画風は同じだけれど、既存の作品とは構図・テーマが違う作品」というものが簡単に作成できてしまいます。

前段で触れましたが、作品の「アイディア」(イラストであれば、画風)は、盗用には当たらないため、上記のものは、著作権を侵害する作品には当たらない、ということになってしまうのです。

そのため、文化庁も、

・著作物の利用し上と衝突するか

・将来における著作物の潜在的販路を阻害するか

などについても、著作権の侵害として考慮すべきではないか、という議論を重ねています。

問②

AIが作成した作品に、著作権は認められるのか?

この答えは、「AIの利用の仕方による」というのが、現段階の政府の見解です。

まず、著作権が認められない場合について。

著作権は、著作物に生じるものです。

著作物は、「思想又は感情を想像的に表現したもの」が当たります。

現段階の技術では、AIには、「思想又は感情を創作的に表現できない」というのが政府の見解です。

そのため、「AIが自律的に生成した作品は、著作物には当たらず、したがって著作権も生じない」というのが答えです。

次に、著作権が認められるケースです。

それは、AIを道具として使用して、ある人の「創作意図」を表現すること、人が「創作的寄与」と認められる行為を行ったかどうか、がポイントになる、としています。

創作的意図、とは、イラストを例に挙げるならば、AIが出力したデータに対して、描き変えや、描き足しをしているかどうか、というアクションを指します。

しかし、上記に対して「どのような行為が創造的に寄与と認められるかは、(中略)総合的に評価する必要がある」という但し書きもありますので、「ちょっと描き足せばOKね!」というわけにはいかないようです。

問③

認められると仮定した場合、著作権は誰のものになるのか?

システムを作った人? 作品の出力の学習に使う作品を選別した人? 作品を出力した人?

この点については、令和5年の文化庁のセミナーの段階では、結論が出ず、「今後考え方を整理し、周知を進める」としました。

さいごに

今回の記事の根拠となっている著作権法30条の4は、AI開発を見越して、平成30年にの著作権法改正により追加された部分です。

AIの発展と共に、法整備も進むものですので、将来的には上記の文化庁の見解が、180度転換…ということもあります。

ツールの発展と共に、それを取り巻く法整備についても、正しい知識を収集し、「正しく、安全に」AIを利用しましょう。